プロジェクトのいきさつ

世界は今、大きな転機に立っています。西欧が主導してきた近代以降の社会の価値観、そして資本主義の発展。どれも膨張して行きつくところまで来てしまい、その先に何があるのか、どうしたらよいのか、まだ誰にもはっきりとは見えていません。

そんな時代の分岐点にあって、短期間に世界を見て周り、「世界の今」を感じる機会を得ることは非常に貴重であり、体験するからこその意味・役割があるのではないか、まずはそんなふうに考えました。



結婚当初より、たびたびクラシック音楽を聴きに海外を旅してきた私たち。今回「地球探検」と称して、これまでに行ったことのない場所を訪れて貪欲にいろんなものを見て吸収して来ようと企画した背景には、実は私たちのライフスタイルが関係しています。

2004年、三井住友銀行に勤めていた夫の一生(かずお)。当時そこには、「創己塾(そうきじゅく)」という外部の教育機関に行員を派遣し、IPO実務や企業のCFOとして活躍するために必要となるスキルを学ばせ、セカンドキャリアの手助けをしようという制度がありました。50歳前後の行員が指名されて派遣される他に、40歳以上の希望者も応募することができたのですが、夫はこれに手を上げたのです(彼によると事前に私に応募しようかどうか相談したらしいのですが、私は「応募することにしたから」と言われた記憶しかありません)。

当時の一生は41歳。それまでバブル崩壊後の企業再生に奔走する激務の日々だったのですが、創己塾では仕事を離れて片っ端から授業を受けまくり、家でも講義をDVDで受講し、これまでなかなか時間が取れなかった読書も大量に行う生活に。スポンジが水を吸うかのようでした。結局創己塾での2年間が、それまでのキャリアの棚卸しをするとともに新たな知識を入れて自分を再起動する貴重な機会となり、そしてそこで必死に勉強したことや自分を振り返ったことが、その後の活動につながっていきました。

一方の私は、銀行入行後3~4年目に夜間の経営大学院に通ったこと、そして2000年からは銀行を退職して法律の勉強をすることなどを通し、「大人になってから全く新しい分野の勉強をすると、習熟するために時間は余計にかかるけれど、理解が進むと視野が一気に広がる」ということを実感として持っていました。

これらの経験から私たちは、現役を引退するまで休みなく働き続けるのではなく、仕事に集中する時期と、自分を振り返って新たな学びを得、次に向けて巻き直しをする時期を交互に繰り返すライフスタイルが自らの成長につながり、とてもエキサイティングである、という結論に達したのです。

ピーター・ドラッカーが3ヶ月取り組むテーマと3ヵ年取り組むテーマを同時並行的に組み合わせて勉強することをすすめ、多様な分野を勉強すると新しい体系やアプローチを受け入れられるようになると説いていましたが、数年ごとに専門分野以外の新しい知識をある程度体系的に注入していくことは、やってみると目から鱗の体験になること間違いなし。非常に重要なことだと私は思っています。

そこで2014年、それまで一生が8年間寝食を忘れて取り組んできた再生支援プロジェクトがEXITしたため、次のステップへ進む時期が来たと判断。この機会に世界をいろいろ見て周り、次の私たちをつくる起爆剤になるような体験をしようと企画しました。プロジェクトは諸般の事情から3回にわけ、題して「地球探検ーInspire the Future 世界2.5周―」。

1回目=世界0.5周

ヨーロッパ夏の音楽祭めぐり(2014.7.23~8.25。34日間)

2006年より「音楽と社会とのつながり」をテーマにクラシック音楽についての執筆活動を行ってきた延長線上にある企画。ドイツのバイロイト音楽祭、ロシアの白夜祭などをはじめ、これまで体験の機会がなかったベルギーの古楽の音楽祭、かつての炭鉱の街をアートの発信地に転換したドイツのルール・トリエンナーレなど、街とアートの結びつきを体験できる7ヵ国22都市を訪問。

2回目 =世界1周

世界一周航空券を利用した企画(2014.9.10~11.28。80日間)

ぜひとも訪れたかった17ヵ国53都市を訪問。

3回目 =世界1周

ラグジュアリー×シニアビジネスの探求(2015.1.7~4.13。96日間)

ぱしふぃっくびいなす「世界一周クルーズ2015」に参加
(途中2015.2.21~2.28 フランス船ル・ソレアルの南極クルーズに参加)

以前から「世界一周クルーズってどういうものなのだろうか?」という疑問を持っていた私たち。体験しない限り疑問は解けない、さらにはクルーズの客層である今どきシニアの行動を知ることは、今後の社会を考える上でも貴重な経験になるのではないかということで、この機会に参加。アフリカや南米をめぐる航路であったこと、途中南極にも行けるということで「ぱしふぃっくびいなす」を選びました。