観光客が激しく減った国~エジプト編

10月4日

次の訪問地はエジプト。カイロのみ訪問予定であったが、移動手段や治安の面から個人で動き回るのは大変だと判断し、現地発のツアーに参加することにしていた。そんな中、カイロへ移動する前日、旅行会社から注意喚起のメールが転送されて来た。

~引用

エジプト在留邦人の皆様へ

平成26年10月2日

在エジプト日本国大使館領事部

治安情勢に関する注意喚起(平成26年10月2日付)

1 10月1日、シナイ半島を拠点に活動するジハード組織「アンサール・バイト・アルマクディス」名で、犠牲祭期間(10月4日~7日)にエジプト全土で軍・警察等を標的とした攻撃を行う旨発表しました。最近では、都市部に加えて、砂漠地帯の軍・警察施設に対してもテロ攻撃が発生しています。

2 また、昨年10月6日の第4次中東戦争の戦勝記念日には、全土で大規模な反政府デモが実施され、治安部隊との衝突の結果多くの死傷者が発生しました。現段階で具体的なデモ実施予告等はありませんが、同記念日前後に反政府デモが発生する可能性も考えられます。

3 ついては、最新の治安関連情勢の情報の入手に努めるとともに、警察等治安当局・国軍関係の施設に近づかない、デモや集会が発生している場所には近づかない、不特定多数の人々が集まる場所に近づくことは必要最小限にする、砂漠地帯も含め、国内旅行に行く場合は観光業者や宿泊先に旅行経路及び滞在先の治安状況を事前に確認する等、不測の事態に巻き込まれないよう最大限の注意を払ってください。

以上、続けて旅行会社からのアドバイス、

カイロでのご滞在でございますが、カイロご到着日は夜、ご出発日も朝となっており、第2日目と第3日目のご観光も弊社でのお手配となっておりますので、ご自身でカイロ市内へ行かれる事はないかと思いますが、もしご予定されていましたら、ご自身ではカイロ市内、特にカイロ中心地などは行かない様にご注意下さいませ。
ご宿泊ホテルは、ショッピングモールの隣にあり、このモールは警備がかなり厳しいので、ホテル&モール内でしたら安心してご滞在をお楽しみ頂けるかと存じます。

またホテル周辺は、一般的に治安の良い高級住宅地にあたりますので、それほど危険ではないかと思いますが、念の為、早朝の人通りのない時間や夜遅い時間帯は外出されない方が良いかと思います。

~引用終わり

このメールを読み、がぜん不安になった私。これまで危険な目に遭わずに旅を続けて来られたけれども、遂に危ない目に遭うのだろうか、親が知ったらひどく心配するに違いないなど、頭の中を思いが渦巻いた。

さらに、ヨルダンからカイロまで搭乗したエジプト航空(MS702便)の乗客は、何故か男性比率が異様に高い上に、着陸後まだ飛行機が停止しないのに皆勝手に立ち上がって荷物を取り出そうとしたりで、悪印象が加速する。入国時もビザの取得代が大きく値上げされていて、不信感は上がりっぱなし。

そんな中現れた現地人のガイドさんは何事もないかのように業務を遂行する。やや拍子抜けしつつ不安半分でホテル(ホリデーイン・カイロ・シティスターズ)に夜10時頃到着した初日であった。

10月5日

エジプトのツアーはギザのピラミッド観光から始まった。

通常は朝のカイロ市内の道路は大渋滞なのだそうが、犠牲祭の連休であるため、スムーズに移動できた。都市化の進行で大渋滞が起きるのは世界的な問題である。

ピラミッドは予想よりも大きかった。そしてすぐ近くまで街が広がっている。石を積み上げて造られていることも来て初めて知った。

ギザの3大ピラミッドの中で最も大きいクフ王のピラミッド。
ピラミッド

上部に化粧石が残っているカフラー王のピラミッド。中に入った。通路が狭い。
ピラミッド

らくだが似合う風景だが、らくだ乗りの勧誘は噂に聞いたほどしつこくなかった。3つのピラミッドを眺められるビュー・ポイントではトリック写真の撮影が流行っており、中国人のツアー客が熱心に写真を撮影。らくだの勧誘のおじさんに断ったら「さらばじゃ!!」と日本語で言って去って行ったのが大爆笑だった。

カフラー王のピラミッドの前にあるスフィンクス。大きい。
スフィンクス

ギザに来て印象的だったのは、観光客がこれだけしかいないのか?という驚き。入場の列もないし、駐車場に観光バスがズラッと並んでいることもない。それもそのはず、エジプトでは2011年1月の革命以来、政情不安で観光客が激減。少し持ち直しているものの、厳しい状況が続いている。エジプトの国家収入は観光業が15%も占めるため、回復に向けた取り組みがなされており、あちこちにツーリストポリスが配されているのを目にした(2015年6月10日のニューズウィークの記事によると、エジプトの観光収入は革命前の2010年には343百万ユーロあったが、2014年には14百万ユーロに減少した。観光地を狙ったテロは続いている)。

パピルス製品を売るお店を見学。製作工程を体験した。
お店

エジプト考古学博物館。膨大な展示量だが、ガイドさんのセレクトでサクサク進んだ。ツタンカーメンの秘宝の部屋は鮮やか。黄金に輝くマスク、装飾品も棺もミイラの入れ物もインパクトがあった。もう一つインパクトがあったのはミイラ室。身体は小さく、何体も並んでいた。4000年もそのまま保存されていることに驚く。太陽信仰により、死後天国で幸せに暮らすためにミイラになる。
博物館

午後はカイロ市内のイスラム地区へ。カイロには600以上のイスラム建築があり、世界遺産にも登録されている。丘の上に建つガーマ・ムハンマド・アリ。
モスク

イスタンブールの寺院を真似て造ったので似ているが、彼の地へ行ったばかりだったので本家にはかなわない印象を受けた。
モスク

ガイドさんはムスリムだったので、お祈りしていた。
モスク

午後になり、街に人があふれ出してきた。道路も混雑。

みやげもの屋が並ぶハーン・ハリーリを散策。中国人のツアー客が多いので、歩いていると中国語で声をかけられる。世界的な傾向である。
通り

焼きとうもろこしを売るおじさん。日本の焼きとうもろこしは醤油味だが、エジプトは何味なのだろう?塩?何もつけない?
とうもろこし売り

カイロの街は砂埃で基本的に汚れている。だから店先の商品もくすんでいる。人々の欲望が渦巻いてささくれ立っている印象を受けた。インドや中国の巨大都市と似た匂いがする。

ここで爆弾が仕掛けられて爆発するとか、デモや暴動で死傷するといった出来事が起きることは、想像つかないことではないような気がした。

宿泊したホテル(ホリデーイン・カイロ・シティスターズ)に隣接したショッピングモール、シティ・スターズ。巨大。モロッコのキャンプで使うライトを買いに行ったのだが、お店が多すぎて探すのが大変だった。
モール

ファストフードのフードコートは大賑わい。マクドナルドなど世界共通の顔ぶれが出店している。
モール

上のフロアにもう少し落ち着いたレストラン街があったので入った。チキン・ムサカ。ラップサンドのようなもの。おいしかった。
食事

10月6日

ツアー2日目。まずダハシュール観光。ナイル川周辺に農業地帯が広がるのを見ながら移動する。途中で角度が変わる屈折ピラミッド。
画像の説明

ピラミッド内部の細い通路を60m上って降りる赤のピラミッド。空気が酸っぱく淀んでいる中、腰をかがめて階段を上り下りするのでひざが笑う。ピラミッドからの眺めは、砂漠と緑(なつめやしの森)のコントラストが美しかった。ナイル川の肥沃な大地だと実感する。
ピラミッド

メンフィスへ移動。都だった土地にしては今は何もないが、メンフィス博物館にはラムセス2世の巨像が横たわっている。脚の一部が欠けている。
像

中庭にあるアラバスター製(大理石に似た粒子の細かい白い半透明の石)のスフィンクス。顔が良好な状態で残っている。
スフィンクス

広大な遺跡が広がるサッカーラへ。ジォセル王のピラミッドコンプレックスの柱廊。
遺跡

長方形の大墓が6段重なった階段ピラミッド。
ピラミッド

お昼ごはんを食べたローカルレストラン。外のテーブルは気持ち良く、料理もどれもおいしかった!
食事

女性が外の窯で一枚ずつ焼いていたアエーシ。手作りで素朴。
画像の説明

そら豆のコロッケ。
食事

メインは炭で粗びきラムを固めたものとチキンを焼く。
食事

なつめやしの葉。道路に広げて置かれていた。車がその上を通ることでやわらかくして、それを籠などに加工するのだそう。生活の知恵だ。
なつめやし

じゅうたん屋さんで製作工程を体験。売り物がずらーっと並べられており、お店の人に「どれが気に入った?」と聞かれたので指差したら、日本円で3千万円くらい(本当?)する超高級品で、日本では高島屋などが扱う品だと言われた。私はお店で一番高い商品を当てるのが特技なのだが、まさかの正解。
じゅうたん

荷物が落ちてこないのかちょっと怖い。
車

当初、治安に関する注意喚起を受け、大いに不安を感じながらスタートしたエジプト訪問。

現地ツアーに参加したこともありスムーズに日程をこなすことができた。個人旅行はあっちぶつかり、こっちぶつかりの連続なので、ガイドさんに全て連れて行ってもらい、解説してもらえるのは目から鱗的に楽だ。他方、自分で苦労していない分、他の訪問地に比べてエジプトの印象が弱いようにも感じていた。今これを書きながらあらためて振り返り、エジプトの見どころも迫力あったと再認識した次第である。

エジプトの政情と治安の不安はまだまだ続いているようだが、安全に外国人が訪れることができ、そしてぼったくられずに観光できる日が早く来てほしいと願う。

(2014.10.4~10.7)

続いて、モロッコ編