中東リゾートの実力やいかに?~ヨルダン:死海編

10月3日

死海のリゾートについてお話する前に、まずは死海への道のりの話から。

ペトラではエコノミーなキャンドルズホテルに宿泊したのだが、シャワーにお湯が出ない時間帯があったり、セイフティボックスのつくりがちゃちだったりであちこち怪しかった。朝食会場も行ってみたら暗くて何もなかったりしたのだが、やおらスタッフのお兄さんが現れてあれやこれや食べ物を出してくれた。

その一つ、最後に出てきた揚げ菓子。ふんわりしていて蜜がかかっている。
食事

チェックアウトのときも、税込みの金額がラウンド数字だったり、クレジットカードの機械が壊れているから現金で払えとか、フロントのおじさんの顔色が悪かったりといちいち怪しかったが、死海まで移動するタクシーを呼んでもらったら運転手さんが大当たりだった。というわけで、怪しいながらもなんか憎めないホテルであった。人には勧めないが。

運転手さんはペトラ以外にも見どころはたくさんあるから寄って行けとしきりに言う。「死海へまっすぐ向かってほしい」と言ったらとても残念そう。結局、ストレートに飛ばすデザート・ハイウェイではなく、キングス・ハイウェイを通って景色を楽しみながら行くことになった。

十字軍が初めてヨルダンに進出して築いたショーバック城。
城

道中は絶景の連続だった。とにかく広大、スケールが大きい。こういう場所で生活したら何事も俯瞰して見る器の大きな人間になるのではないかと思った。世界を見渡すような、そんな立ち位置と空間の広がりを感じるのだ。
景色

イスラム教のお祭りでアッラーの神に羊を生贄に捧げる犠牲祭前だったため、羊が大移動中。
羊

死海が目の前に現れたとき、これまでの人生で体験したことのない光景に息を飲んだ。青い静寂が広がっていて、その先にイスラエル側の対岸の低地が細く続いている。
死海

死海は地球上で最も低い海抜マイナス420メートルに位置する塩湖。塩分濃度が30%もある。

塩の結晶が見える。
死海

運転手さんは道中いろいろ解説してくれた。何で運転するだけではなく、様々な話をするかというと、自分の話を聞いた客が自国に帰り、その体験を人に話すことで聞いた人もヨルダンを訪れようと思うかもしれない。だからそういう輪が広がることを願って話しているのだそう。感動した。

宿泊するホリデイ・イン・リゾートに到着。ファミリー向けだが、トリップアドバイザーでの評価が非常に高かったので何かあるのかなと思って選んだ。フロントにはトリップアドバイザーの評価を紹介する大きなパネルがしっかりあった。
ホテル

ペトラ以来レモン・ミントジュースにはまった。生のミントがとてもさわやか。
ホテル

ハエがたくさんいる。
ホテル

プライベートビーチ。
ホテル

もちろん部屋にはメッカの方向を示す目印があった。
ホテル

夕暮れ時、死海に浮かぶ。何もせずとも本当に沈まない。
死海

泥が入った壺が置いてある。泥はかすかに温かい。身体に塗って乾かした後そのまま海に入って泥を流す。
死海

ひたすら静寂な水面と夕日がこの上なく美しかった。
死海

ロビーには犠牲祭の飾りつけ。
ホテル

夕ご飯はヨルダン料理のレストランでZarb体験。Zarbとは、地下の密閉された空間で低温の炭火によって6時間じっくり火を通してつくる料理。週に1日だけ提供している。

まずは前菜。豆やなすのペースト、青菜からミンチカツ風、中がチーズの揚げ餃子みたいなものまでたくさん種類があってこれだけでおなかいっぱいになる量。
食事

ヨルダンのワインにトライ。味は普通。
ワイン

いよいよZarb。窯から出すパフォーマンスは盛り上がった。シェフが地中から出して素材ごとに出来上がりを見せてくれる。他の料理人も厨房から出て来て窯を囲み、一緒に記念写真を撮ったりとにぎやか。
食事

一人分ずつタジン鍋によそってサーブしてくれる。チキン、ラム、米、根菜。ヨーグルトの付け合わせが添えられる。基本的に塩と素材の味のみなので、やさしく滋味にあふれた料理。旅の前途が長いため、限界まで食べまくることを自重しているのが残念であったが、貴重な料理を体験できてよかった。
食事

ここでも犬ではなく猫がテーブルの周りをうろうろ。
猫

デザートにはアラブ菓子がいろいろ盛られたプレートが出た。全部おいしかった!!

スタッフのサービスも気持ちのよいもの。帰りにうかつにもハンドバッグを忘れてしまったのだが、フロント・スタッフへ迅速に連絡されており、中身の紛失がないかにも気配りがなされていた(もともと大したものは入っていなかった)。このホテルが高評価なのも頷ける。

10月4日

翌朝。もっと長く滞在したかったが1泊のみ。
ホテル

ゆでた豆のお鍋。オリーブオイルや玉ねぎなどの定番に加え、クリーミーなものやスパイシーなものなど、味付けのバリエーションが多い。
食事

朝の空気はさわやか。
ホテル

鳥がさえずっていた。
鳥

犠牲祭のお供えのクッキーをいただく。
ホテル

この後、休日なので子ども連れが多くやって来た。
ホテル

午後からはスパへ行き、サウナとエステを体験。ホリデイ・インは死海の他のリゾートホテルに比べてスパの規模が小さいため期待していなかったのだが、全身マッサージも死海の泥パックも非常にハイレベルな施術で満足できるものだった。施術中、なぜか「冬のソナタ」の音楽がかかっていて、こんなところにも韓流が、、、ペトラでは乾燥がひどく、甲羅のように粉をふいた肌になっていたが救われた。夫もピカピカ肌に。

こちらに来る前は、死海のリゾートホテルはぶっきらぼうな接客で、割高感に満ちているに違いないと予想していたのだが、見事に裏切られた。彼らは立派な「おもてなし」を提供していた。日本人はともすると、観光業の「おもてなし」は日本の専売特許であるかのように捉えがちであるが、このホリデイ・インのようにスムーズで満足度の高い滞在を提供できることは、日本国内でもなかなかないように思う。やはり世界は広いし、サービスを磨いている人たちはあちこちにいるのだ。井の中の蛙的な視野に陥ってはいけないのだとあらためて認識した。

(2014.10.3~10.4)

続いて、エジプト編