トップ>here
ブロンフマン&フィッシャーの室内楽コンサート
サンフランシスコ交響楽団のシューベルト/ベルク・フェスティバルのプログラムには、室内楽コンサートもあります。出演者はフェスティバルのゲストである、ピアノのイェフィム・ブロンフマンとヴァイオリンのユリア・フィッシャー、そしてサンフランシスコ交響楽団のメンバー。
1曲目が、シューマンの幻想組曲 Op.73(クラリネット:Luis Baez)
サンフランシスコ交響楽団では、メンバーがソリストになったり、室内楽を披露する機会が様々に組まれています。これまで聴いてきた感じでは、メンバーはやはり普段アンサンブルで演奏しているので、ソリストのときも自分の個性を前面に打ち出すというよりは、周りと調和する演奏をする傾向にあります。
本日のルイスもピアノとなじんでいました。ブロンフマンのピアノが職人芸。
2曲目は、シューベルトのソナタ a moll D.385(ヴァイオリン:Fischer)
これまでフェスティバルで2日フィッシャーを聴きましたが、どういう演奏家なのか、イメージがはっきりつかめなかったので楽しみにしていました。
ドレスは妊娠中ということもあるのでしょう、3日とも同じ。黒のベルベットのシンプルなドレスにレースのボレロという垢抜けないファッション。
前2日同様彼女は、あくが強くありません。そのかわり気負いとか力の入ったところがなく、音が自然に出てきて、歌っているかのようなヴァイオリンなのです。
こういう特色の若手は他にいないような気がするので、これからどういう音楽家に発展していくのか、期待したいと思います。
ブロンフマンのピアノは、曲を完璧に自分のものとして消化した上でアウトプットしている印象を受けました。彼は今回のフェスティバルを通して、演奏した曲全てがそうでした。過去に聴いた演奏含めて本当にプロフェッショナルで、その仕事ぶりと安定したピアニズムには驚嘆するばかりです。
プログラムの後半は、フィッシャー、ブロンフマンとSFSメンバーによるシューベルトの5重奏曲「ます」(ヴィオラ:Yun Jie Liu、チェロ:Peter Wyrick、コントラバス:Scott Pingel)
ブロンフマンの確かなベースの上にフィッシャーがリーダーシップを発揮して、非常にまとまっていて、かつ表現豊かな演奏でした。とても自然な歌い口でした。
途中フィッシャーの楽譜が直しても直しても風でめくれたり(舞台は空調で意外と風が吹く。彼女はとっさにひざで押さえようとしてハッと気づいてやめていました)、変奏の最後の静かなところでジイさんの杖がバタンと倒れたり、曲が終わったと思ったお客さんが一瞬拍手しちゃったりとか、ちょっとしたハプニングはあったものの、演奏者もお客さんも音楽を楽しんでいて、サンフランシスコらしいなごやかな演奏会だったと思います。
最後カーテンコールのときに、シンフォニーのパトロンのおばさま(アメオケではお客さんのことをパトロンと呼ぶ)から出演者一人ひとりに黄色とオレンジの花束が渡されたのですが、お花も素敵でした。
おばさまはフィッシャーとブロンフマンにプレゼントも渡していましたが、ブロンフマンにはSFSストアのSF Symphony柄の靴下でした。
(2009.6.7)